台風が近付いてきて風が強い中、そして雨もぱらぱらと降る中、真夜中の1時2時、家を飛び出して、外を走った。半時間。海まで足を止めなかった。普段は釣り人が糸を垂れる海の、真っ暗な闇。広々として、もちろん誰もいない。風が恐ろしいほどに吹き付けてくる。雨が肌に打ちつけ、痛い。その闇。淡路島の光がぽつりぽつりとある。その闇には、死への予感があった。それは、ただの言葉ではなく、自分の肉体が感じた感覚。先の見えない闇には死を感じる。泣きそうなほどに怖かった。逃げ出したかった。風で、体が飛ばされそうだった。ごうごうと強い音がしていた。