電車に乗っていて、横を見ると、となりの線路にもう一台の電車が走っている。こちらからはその電車の中の様子がよく分かる。ほとんど同じスピードで走っているからだ。しかし、ややこちらのほうが速いようだ。うつろげな表情の女性、新聞を読むおじさん、帰宅につく学生。そういう人たちが、ただ立っているだけの、あるいは座っているだけの人たちが、ゆっくりと、ほんの少しずつ、視界から消えていく。後ろへ下がっていく。そしてふいに、真っ暗な夜の街の風景が広がる。