時間が経つのがはやい。あっというまに流れていく。ひと眠りふた眠り。もう次の日。もう次の日。前の住み処を思い出しても現実感をともなわない。前働いていた部屋の様子を思い出しても、まるで夢のよう。それはもう小学生のときの記憶と同じ場所へ行ってしまった。そして、このいまという時も、やがて…。時間は流れ人は歳をとる。だがあるのはいつも現在。現在が押し流されていく。すごいはやさ。海へといたる流れ。どこから私は流れてきたのだろうか。もう思い出せない。もう思い出せない。もう戻れない。あの部屋には入れない。あの夏の日はもう頭の中にしか存在しない。もちろん恐れているわけではない。ただそう思っただけ。なんとなくそう思っただけ…。