ペドロ・コスタの「ヴァンダの部屋」を観る(DVD)。アルミホイルの上で麻薬をあぶって吸引するためのライター、そのライターを袋の中から何個も何個も取り出しては、オイル(ガス?)が残っているのかどうか耳の近くで振って確かめるシーン。暗闇の中、テーブルの上に様々ながらくたが乗っているのを映し出した、ただそれだけのショット。全面に黒人の体と顔、後ろのベッドに横たわるヴァンダ、そのふたりの会話と、決して交わることのない視線。終始鳴り続ける、ハンマーで壁を叩いて破壊する、あるいはシャベルで家を解体していくいらだたしげな音。貧しさを貧しさのまま、飛び回る蝿を蝿のまま、だれも笑うこともなく泣くこともなく、ただ現実を現実として静かに描写した三時間の永遠と一瞬。