イモムシが空中に浮いていた。よく見ると、浮いているわけではなくて、細く、ほとんど透明な糸にぶらさがっているのだ。観察していると、頭部をうねうねと動かして上に上がろうとしている。見上げると、糸は相当に高い木の枝からつづいているように見える。こんなに長く細い糸が、一匹のイモムシをぶら下げているなんて、どれほど丈夫な糸なんだろうと驚いた。それに、そもそもどうしてなんのために、イモムシはそういう、空中に浮くなんていう不思議な状況にいるんだろう。糸がすでに長く伸びているということは、はじめは木の枝にいたイモムシが、なにかの目的のために口から糸を出しながら地面におりたのか。そして目的が達成されたので、また安全な場所に戻ろうと、糸をつたって(口に戻しながら?)上に上がっていっているのか…。そんなことを考えながらイモムシを見ていると、風やなにかに当たって前後左右に揺れながらも、ほんとうにわずかに少しずつ、上にのぼっていっているのが分かる。じつに懸命な姿で、休むということがない…。
雨がやさしく降りだして、自分はそろそろと部屋へ戻った(そこは、部屋のすぐ近くだった)。