この前見たヘンリー・ダーガーの絵が欲しくて、でも買えないから仕方なく模写してみたのだけれど、ぜんぜんうまくいかなかった。
まず自分は面倒くさがりだから、ていねいに色を塗ることができなくて、それが致命的だった。でも、普段の絵の描き方と違うように絵を描くというのは、それなりに新鮮な経験でもある。自分は奥行きのない絵しか描かない(描けない)から、ダーガーのように奥行きのある(風景の中に人物を配置するような)描き方はしたことがないし、また色の選び方もぜんぜん違うので、感覚的には気持ち悪かったりもするのだけれど、一方で少しおもしろいような気もした。まるで、自分が普段着ない(趣味の違う、あるいは大きさの違う)服を、むりやり着るようだった。ただ、ほんとうに真剣に、集中力を持ってやれば(そして色がうまく作れれば)、模写できないこともないように思う。
おとつい、Bunkamura ザ・ミュージアムでやっていた「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」というのを見たのだけれど、いちばん驚いたのは、おみやげコーナーで売っていた、けっこう値段の張るモディリアーニの絵のコピーが、かなり売れていたことで、たぶんただの印刷で、画面は相当汚かったのにも関わらず(ほんとに汚かった)、だれがこんなものを買うのかとあきれた。こんなものを買うのだったら、少々下手でも、実際に絵の具で(トレースでもなんでもして)描いたほうが、画面の質感は数段良いだろうし、安く作れるだろう。あるいはそこまでしなくても、ただ画集を拡大コピーしたりしたのでも良いと思う。とにかく、あの質にあの値段で、買う人がたくさんいるというのが信じられなかった。