今日はたくさん展示を見た。


1
池袋、ガレリア・プントの會本久美子展を見る。キャンバス作品もけっこう展示されていたけれど、やっぱり自分はドローイングが好きだと思った。キャンバスにアクリル絵になると、會本さんの良い線がなくなってしまうからだろうか(でも、これは自分の趣味的なことかもしれない。だいたい自分は、ドローイングが好きなので)。

2
表参道、スパイラルガーデンで「ウルトラ001」を見る。これは、いろいろなギャラリストが、ギャラリー単位ではなく、ギャラリスト(ディレクター)個人として、作品を見せていくという試み。いろいろ作品は見れたのだけれど、あまりこれというのはなく、がっかりしそうになっていたら、最後に見たポール・デイヴィスが充実していて、見に来て良かったと思った。あまりしっかりポール・デイヴィスを見たことはなかったのだけれど(というか本物ははじめて見た)、かなり良くて、しかもその立っている立場にも、個人的に思うところがあった(そこに置いてあったファイルにインタビューが載っていて、アーティストにしてイラストレーターである自分に、迷いはないと書いていた)。自分も、これでいいんじゃないかと、少し勇気づけられる気がした(ポール・デイヴィスは写真も撮っているし)。ただ、この展示自体について言えば、絵の半分以上が高い位置にあって、よく見ることができないのが残念だったけど…。

3
根津、SCAI THE BATHHOUSEの小笠原美環展を見る。静かな絵で、趣味としては好きな絵ではあるのだけれど、いまひとつ乗れないというか…。画面の質が、あんまり良くないのかもしれない(分からないけど)。

4
上野の森美術館の「Art of our time」展を見る。世界文化賞を受賞した、画家や彫刻家たちの作品(ただし、ほとんどはひとりにつき一作品ずつ)を集めた展覧会。バルテュスタピエス、キーファー、リヒター、ポルケなど、41人。20世紀後半の巨匠たちの作品が、一挙に見れるという展覧会。

5
トーキョーワンダーサイト本郷。赤羽史亮・小西紀行展と、永島千裕、伊藤雅恵、西村加奈子、それぞれの個展を見る。西村加奈子さんの絵が、仏壇とか描いていて、情報量が多い絵でおもしろかった。

6
神楽坂、artdishではまぐちさくらこさんの個展(二回目)を見た。芳名帳の、自分が書こうとしたふたつ前に、川上弘美と書かれていた。本人だと思うけれど、分からない。

7
銀座、ギャラリー小柳でミヒャエル・ボレマンス展を見る。これは、掛値なしに良かった。ネットの画像などでは見ていて、気になっていたけれど、本物は(当たり前だけど)もっともっと、素晴らしかった。一枚一枚の絵はかなり小さいし、展示されている数も少ないのだけれど、絵の前に立つと、なかなか離れることができない。というよりも、ずっと見ていたいという誘惑にかられる。絵の正面だけでなく、側面も含めて、絵全体の精度みたいなものが、ほんとうに高くて驚いた。静かで、謎めいていて、官能的で、画面にオーラ(他にいい言葉が出てこない)があった。映像作品も何点かあったのだけれど、どれもそれぞれ良かった(見せ方がおもしろいものもあった。また、フィルム作品もあって、この作品の、少女のうなじを捉えたショットは忘れられない)。

8
最後に、清澄白河のギャラリービルでいろいろ見る。タカ・イシイギャラリーのアネット・ケルム展とか、ヒロミヨシイのビヨーン・ダーレム展とか。でも目的は、小山登美夫ギャラリーの、長井朋子さんの個展(今日がオープニング)。2年前のGEISAIで知り合って、自分と絵の交換をしたり、個人的にウェブサイトをつくったり、たまに会ったりもして親交のある長井さんが、小山登美夫ギャラリーで個展をするというだけで、なんだか感慨深いというか、(へんな話だけど)関係のない自分が緊張してしまうくらいだった…。とにかく、今回の個展は楽しみにしていた。それで個展を見てみて、今回は、ドローイング(インスタレーション)の部屋がかなり充実していて、良かった(個人的には、上の方にあった、茶色の時計の絵が気になった)。油絵は、白とかうすい色を基調としたものが好きだった。…ただ、そういう個々の作品を見てなにかを思うというより、全体として感じるものがあった。(これは、長井さんの絵とは直接には関係のないことかもしれないし、唐突に聞こえるかもしれないけれど)欲望に忠実であることの大事さみたいなことを考えた。才能というのは、みずからの欲望にひたすら忠実になれる能力のことなんじゃないか。自分は、欲望にたいしてまだまだ中途半端であるように思った。