雨がやんだので出かけた。
行きの電車に乗っているとき、ひまだから手帳に落書きをしていたのだけれど、そのとききゅうに、自分が中学生だったころに見た、ある風景を思い出した。もうほとんど忘れてしまっているような風景の記憶…たぶん、季節は春か秋のころ。それは、あまりにかすかな記憶なので、たしかに自分が経験した記憶に違いないのだけれど、一方で、自分のべつの人生であったことのように思われた(へんな言い方だけれど)。そうしてそこから、人生は一度ということになっているけれど、そうではなくて、一度の人生でいくつかの人生を生きているのではないか、という直感のようなものを得た。あるいは、そういうふうに考えることも可能なんだと思った。