自転車に乗っていて、前からべつの自転車に乗った人がやってきて、すれ違うときに、その人が独り言をいっているのが、聞こえるときがある。でも一瞬のことだし、なにを言っているのかはぜんぜん分からない。あるいは、(これはまあまあ普通のことかもしれないけど)歌をうたいながら自転車に乗っている人と、すれ違うこともある。自分は、自転車に乗っていて、独り言をいったり、歌をうたうことは、まずない。ただ、見えるものを真剣に見ているだけ。
ところで、自転車同士がすれ違う瞬間のことを描いた小説というのはないのかな。あったら読んでみたいけど、たぶんなさそう。自転車が出てくる小説ということでは、アルフレッド・ジャリの「超男性」が記憶にある。これはものすごくへんで、おもしろい小説だった。