宮崎駿の「風の谷のナウシカ」全7巻を読んだ。
これは、自分が中学生のときに途中まで読んでいたもので、当時、最終巻がまだ出ていなくて、結末を知らず、いつの間にか出た最終巻も、結局なぜか読まずにいままできたのだけれど、少し前にテレビで映画版を観て以来、漫画のほうを思い出し、またはじめから、そして今度は最後まで、読んでみたいと思っていたのだ。それで3日前偶然に、ブックオフで全7巻箱入りのが、かなり安く売っていたので買ってきて、昨日から今日にかけて全部読んだ。
むかし一度(途中まで)読んだといっても、忘れているところが多く、というかそもそも内容が簡単ではないので、当時は理解できないところがあったと思うのだけれど、さすがにいま読むとそういうところはあまりなく、十分に読んだという感触がある。
世界観の特殊さや物語のスケールの大きさ、描写の緻密さと素晴らしさ、ナウシカという人物の高貴な魅力、巨神兵ヒドラ王蟲や蟲たち、土鬼(ドルク)の皇弟、皇兄などなどの造形、あげればキリがないような様々な特徴や魅力があって、漫画表現のひとつの極限のようにも思えた。たぶん、大友克洋の「AKIRA」と並ぶのは「ナウシカ」しかないような気もする。しかしそれでも不満はあって、最後に近づくにしたがって、その力強さや、作品の広がりみたいなものが、やや小さくなっていくようにも感じられてしまった。ひとつには、最後のほうで「ナウシカ」の根源にある世界観が、言葉によって説明されてしまうからだと思う。それは必要なことかもしれないけれど、しかしそれによって、それまで持っていた混沌としたところが小さく(整理されて?)しぼんでしまうような気がしたし、またリズムもなくなってしまう気がした。…と、しかし、不満みたいなものが出てきてしまうのも、きっとそれまでがあまりに素晴らしいからだと思う。