一週間くらい出かけていて、さっき帰ってきた。
いろいろあったのだけれど、一番ショックだったのは、実家に住んでいる白い犬が、たぶん長く生きているせいで、かなり弱々しくなっていて、歩くのもままならなかったこと。足が悪いらしく、よたよたと斜めに歩いていくしかなくて、しかも散歩に出たとたん、おしっこを流しながら歩く。自分では意識ないのだろうけど、とにかく出てしまう。そういうのを見ながら河原に散歩へ連れていった。夕方で、空気が冷たく透明で、地平線のあたりが赤くなっていて、風にあたりながら、なんだか自然と涙がこぼれるようだった。かわいそうというか、悲しいというか、どういう言葉がいいのか分からないけれど、とにかくショックで、なにもいえなかった。
この犬は、自分が中学に入るか入らないかくらいからいっしょに暮らしている犬で、名前も自分がつけたのだけれど、最近はほとんど会っていなかった。ひとつ覚えているのは、むかし、自転車通学をしていたころだと思うけれど、犬の体に自転車を倒してしまったことがあった。もちろんわざとじゃなく、事故みたいなものだったけれど、それ以来、自転車が近くにくると、犬は、あからさまにびくびくして、体を小さくさせたものだった。そのころ、自分はそれを見て、少しばかにしたような気持ちで、こわがりだなあと思っていた。しかし、もしかして、その自転車を倒した影響で、いま足を悪くしているのかもしれない…10年以上たって、いまごろその影響が出てきたのかもしれない、とふと思う。もちろんそんなこと、確かめようがない。だけど、もしそうだとしたら、ほんとうに申し訳ないことをしたと思う。
犬が、夜、自分たちが寝る時間に、悲しそうな声で鳴いていたので、寝る姿のまま、見に行った。犬小屋に、自分の足で入れないのか、外にいる。コンクリートの上だから冷たいだろうと思い、持ち上げて犬小屋に入れてやったが、それを望んでいたのかどうか。動物と喋れないから分からない。