土曜日の夜から日曜の朝にかけ、高速バスに乗って愛知へ行き、豊田市美術館の村瀬恭子展を見た。
絵、良かった。素朴な感想かもれないけど、絵の具と筆とキャンバスなどで、こんなに豊かで複雑な、深いものがつくれるんだと思った。とくに最近の大画面のもの、また個人的にははじめのツバメのシリーズから目が離せず、長いあいだ見ていた。技術的なことを自分が書くのはおこがましく、なにも書かないほうがましだけれど、さまざまな試みが効果的になされていることは、素人目にも感じられた。筆の動き、絵の具の濃淡、(現実のルールではなく)絵の中のルールによって絵がつくられていっていることが、気持ちよかった。
また、この日は展示の最終日で、トークショーも行われた。いろいろと興味深い話が聞けたのだけれど、ときどきはっとするような言葉がさらりと口にされた。絵を描くときにまずどういうふうにするか、というところで、キャンバスの上に張っている「気体みたいなもの」を掻き回していく、という表現をされておもしろかった。たしかにそれを聞くと、村瀬さんの絵がそういうふうにして描かれているのだと、納得できた。また、あるとき筆のことを、「たまたま手の先についている筆で…」という言い方をされて、それもおもしろかった。筆であってもなくてもどちらでもいい、絵を描く道具はなんでもいい、ということと、また同時に、筆も手もあるいは体も、すべてひとつの絵を描く道具にすぎない、という意味などがふくまれているような気がした。絵を描くことに自分の存在すべてを奉仕していくという意志が、言葉の後ろに隠されているような…大げさに解釈しすぎかもしれないけれど、そういう強い意志をかいま見た気がした。
トークショーが終わってサイン会をするというので(少し期待していた…)、画集にサインをしてもらって嬉しかった。サインする人には、丁寧にひとりひとりその人の名前を書いていかれたので、自分もせっかくなので「qpさんへ」と書いてもらった。また秋に東京で個展をするというので、見に行きますと言った。
そうして、その日の夜にまた高速バスに乗り、月曜日(今日)の朝に帰ってきた。