この何日かのオランダ旅行に関する日記を見ていただくと、今回の旅行ではあちこち街を歩いたり自転車に乗ったり、とにかく外ばかり行っているような印象を持たれるかもしれませんが、やっぱり三分の一から半分くらいは美術館を見るのに時間を費やしたと思います。


アムステルダム国立美術館アムステルダム市立美術館、ゴッホ美術館、ユトレヒト中央美術館、ディック・ブルーナハウスが主に足を運んだ美術館です(他にもありますが…たとえば宝石に興味あるのでダイアモンド関係とか)。
ただ、最初の3つと後の2つは、場所的に固まっているので、あちこち長い距離を移動したということはありません。しかも、最初の3つの美術館は、泊まったホテルから歩いて5分くらいのところにありました。


とはいえ、ディック・ブルーナハウス以外はどこも見所が多く、展示も充実していて、ひとつの美術館を見るのにけっこう体力と時間を使いました。オランダ旅行自体の時間が限られているので、じっくり見たいと思うものの、早足に見ていったところも少なくありません(それでもけっこう時間がかかった、ということなんですけど)。


自分は日本の美術館しか知らないので、日本の美術館との比較でしか考えられませんが、展示の仕方とか構成は、それぞれとても工夫していたり考えられているという印象がありました。とくにアムステルダム市立美術館、ユトレヒト中央美術館は、(展示されている中身と共に)そういう意味でもおもしろかったです。たとえば、ある作品を展示するときに、それを単に壁にかけるのではなく、その作品がうまくはまるように、壁にその作品専用の穴を開ける、というようなことです。レイアウトに対する意識も、繊細だなと思うことが多かったです。


もうひとつ思ったのは、美術といえばやはり絵と彫刻が重要と考えられていると思いますが、オランダにとってはインテリアや家具、工芸、陶磁器も同じように大事なんだなということです(あるいはデザインも)。というよりも、それらを同列に扱っていきたいという意志が感じられました。たとえば日本では国立近代美術館があって、別館として工芸館があったりしますが、オランダではそのふたつを混ぜてひとつの美術館で展示している印象がありました。また、古い、驚くほど精巧なドールハウスなんかも、ユトレヒト中央美術館、あるいはアムステルダム国立美術館で展示してありました(ドールハウスは発祥がオランダかドイツと言われているそうです)。


ユトレヒト中央美術館でもうひとつおもしろかったのは、美術館(であり博物館)の研究室的な部屋も、展示の一部として組み込んでいたことです。順路に沿って展示を見ていくと、途中いきなり土器を復元している部屋に足を踏み入れたり、小さい資料室のような部屋に入ったり(美術館の人が普通になにか本を読んでる)しました。それらは、展示の一部でもあり美術館の仕事部屋でもある、というふたつの意味が含まれているのです。こういう発想は(ほかの国であるのかどうか知りませんが)日本には今のところないような気がします。


あと、日本ではまったく知られていない画家が、オランダでは巨匠扱いで展示されていたりするのもおもしろかったというか、考えさせられました。
それから、ある大きい美術運動があったときに、それに追随する画家が、世界中の国々にあらわれるものなんだなと思いました(シュールリアリズムの特集があったのですが、ダリなそっくりな絵、キリコにそっくりな絵を、ダリでもないキリコでもない人が描いたりしました)。
それらの現象は、日本でもまったく同じように存在するんだろうなと思います。


アムステルダム国立美術館は、レンブラントの「夜警」やフェルメールなどが有名ですが、膨大な数の模型船コーナー、銃や武器のコーナー、陶器や宝飾品のコーナーが印象深かったです。物量に圧倒されました。
あと、美術館の中では普通に写真を撮って良いらしく、レンブラントの「夜警」なんかは、なにか動物園のめずらしい動物でもいるように、まわりに人だかりができ、写真を撮られまくっていました。(自分は写真を撮る以前に、そもそもカメラごと荷物を預けてしまっていました…)


最後に、美術館を見回っている人…日本でいう学芸員さんに当たる人が、日本では(わりとおとなしそうな)女性が多い気がするんですが、オランダでは屈強なボディーガードのような男性が多くて、そこも違っているなあと思いました。
日本では、学芸員さんは、真面目に椅子に座っているところしかほとんど見たことありませんが、オランダでは、スーツ姿のボディーガードのような男性が、口笛吹きながら楽しそうに歩き回っている、という場面にも出会い、カルチャーショックを受けました。


最後に、と書きましたが、もうひとつ最後に。
アムステルダム市立美術館では、ジェフ・ウォールの展覧会も行われていて、日本で見る機会がなかったので嬉しかったです。


なんだかまとまりなく、文章を羅列してしまいました。