以下の文章は、作品集「明るさ」に載せるために書かれた文章です。

結果的には作品集に文章は掲載しないことになったのだけれど、せっかく書いたのでここに載せておこうと思います。

 

 

自分からは多くのものが失われたが、時間だけはたくさんあった。

その時間を、絵を描くことに使おうと決めた。

 

そうして2019年12月から2020年3月まで、集中して絵を描いた。

この、絵を描くことのできる豊かな時間自体が、神さまから与えられた贈り物だと考えることもあった。

 

 

朝は8時くらいに起き、簡単な朝食を食べた後(食べないこともある)、絵を描き出す。

数年前に一度集中して描いたのち、しばらく放置していた水彩画にまた取りかかっている。

絵の内容は、この作品集を見てもらったら理解してもらえると思う。

難しいことはしていないが、自分なりの方法で制作している。

 

もちろん好き嫌いはそれぞれで、こういう絵を好まない、あるいはなにも心動かされない、という人もいるだろう。

それはそれで構わない…(少し残念だけど)。

 

 

3時くらいまで描くと、冬の光が弱くなってくる。

この辺で絵を切り上げることが多い。

天気が良ければ、洋服を着替えて外出することもある。

 

散歩に出かける。

大体の散歩コースは決まっていて、ほぼ同じ道を歩く。

家の前の川沿いを行き、小学校の向かいにある階段を上って丘の上の住宅地に入る。

住宅地には好きな道がいくつかあり、その道を順番に巡回し、写真を撮るのを楽しみにしている。

(手にはつねにカメラを持っている)

 

人は少ない。たまに学校帰りの子供がいる。

豪邸が多く、その家々を見るのも散歩の楽しみのひとつ。

高台にあるので、場所によっては眺めがひらけていて、家々を見下ろすことができるのも楽しい。

 

自分が住んでいる建物、そして部屋を高いところから見ると、なんとも言えない不思議な気持ちになる。

自分のいない部屋を遠くから見ること。

 

家々の上には青い空と流れる雲がある。

さっき歩いてきた道や川も見える。

風がある。

 

竹やぶの道を抜け、猫がいれば猫を見る。

丘を下る。

 

散歩は大体2時間、長ければ3、4時間歩くこともある。

そのまま帰ることは少なく、街へ寄ることが多い。

足りない画材を買って帰ったり、どこかで夕食を食べたり、スーパーで買い物をして帰ることもある。

 

帰り道、夕焼けになっている。

空はオレンジ色、うすい水色。

雲の端の方もオレンジ色に染められている。

人の作った作品とか、世の中に必要ないと思うくらい美しい。

 

2020年3月9日 qp