私が一歩前へ進むと、空き缶がころころと転がった。私が右手で頭をかくと、強い風が吹いて木の葉が揺れた。私が後ろを振り向くと、どこかの教室で勉強していた子供がにっこりと笑った。私が眠そうにあくびをすると、猫がしっぽの形を整えた。私が歩き出すと、世界の反対側で火事が起こった。私が立ち止まると、火事がやんだ。私が笑うと、だれかが泣いた。私が家へたどりつきドアを開けると、ビルから人が飛び降りた。私が夕食の用意にとりかかると、生き別れていた親子が奇跡的に再会した。私がきゅうりを切ると、ブラジルの古い大木がチェーンソーで切り倒された。私が水で手を洗うと、オランダが水没した。私がテーブルにつくと、アメリカが戦争をはじめた。私が食べ物を口に入れると、アフリカの飢えた子供に蝿がとまった。私が食事を終えると、中国の人々が自動車に乗りだした。私が入浴すると、新しい星が発見され、その星に凡庸な名前が与えられた。私が寝室に入ると、見たこともない巨大な蝶がだれに見られることもなく死んだ。私があかりを消すと、ゆっくりと航行していた船がようやく目的の島にたどり着き、船員が手慣れた手つきでイカリを降ろした。私が眠りにつくと、あなたが起きた。さて、次はあなたの番です。