自分はこどもが出てくる映画が好きです。どんな映画が好きかと聞かれたら、こどもが素敵な映画と答えます。不思議な事にこどもを描く映画作家というのは限られている。こどもを出そうとしない映画作家は、積極的にはこどもは出さない。シナリオ上こどもが出てくるから、仕方なくこどもを出したりする。たとえば、いま日本で活躍している(と言われている) 黒沢清青山真治がそうです。彼らの映画は大人ばかりです。だから自分は、彼らより「どこまでもいこう」を撮った塩田明彦の方が好きです(「カナリア」は未見)。黒沢清も嫌いじゃないんですけど、やたらと深刻だったりするのがどうも…(自分が思うに、こどもが主役の映画はどこか楽天的なところがあって、それも自分がこども映画の好きなところです。こども映画にはジャン・ルノワール性とでも呼ぶべき性格があるのかも)。だから映画の出来がどうというより、趣味として自分は塩田明彦が好きと言いたいし、そしてもちろん、一番好きなのは相米慎二ですね。相米慎二の映画はこどもが出てくる映画がかなり多い。10代前半の年齢もこどもだとすると(自分は中学生高校生の映画も好きです)ほとんどがこどもが出てくる映画になるのではないか。しかもみんな素敵なのです。なかでも自分は「お引越し」が大好きで、この主役の女の子がすごくいい。「夏の庭 the friend」も好きです。「台風クラブ」も大好き(「ションベンライダー」は恥ずかしながら観ていなくて、前に店で売っているのを見つけたので今度DVDを買おう。関係ないですが、自分は山中貞夫の「人情紙風船」も観ていなくて、これも悔しい思いでいます)。日本映画では、自分は、こどもが素敵という理由で(長まわしの撮影も好きだけど)相米慎二の映画が一番好きかもしれない。それから小津安二郎も、小津の最良の映画がそれだとは言えないけれど、こどもが素敵な映画を撮っていますね(溝口健二は大人の映画ばかりかな)。もちろん世界に目を向ければ、たくさんの、こどもが素敵な映画を撮る人がいますね。たとえば「友達のうちはどこ?」のアッバス・キアロスタミ、たとえば「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセ、たとえば「冬々の夏休み」のホオ・シャオシェン、たとえば「都会のアリス」のヴィム・ヴェンダース、たとえば「大人は判ってくれない」フランソワ・トリュフォー、たとえば「E.T」のスティーヴン・スピルバーグ。もちろん他にも、たくさんいるでしょうね。とにかく自分は、こういうこどもの映画が好きだし、それはたんにこどもが好きだからなんですね。
話が少し映画と関係ないところへ飛びますが、自分は、カメラを手に持てば、写真に撮りたくなるのは大人よりも絶対にこどもですし、実際に自分はこどもを好んで撮っています(もっと言えば、男の子より女の子が好きです…この発言はかなり危ないかもしれないですが)。なぜなんでしょうね。自分が大人になったからかな(自分から最も離れた存在だから?)。きっと、映画に好んでこどもを登場させる映画作家も、こどもが好きなんでしょうね。自分も好きだから、よく分かります。だからこれからは、絵を描くときも、こどもを描こうかなあとか考えたりしています(実際に描くかどうかは分かりませんが)。こどもが好きな絵描きといえば、奈良美智とかヘンリー・ダーガーがいますね。アニメではやっぱり、どう見ても宮崎駿はこどもが好きですよね(こどもというか少女というか)。漫画は、ジャンルの性質にもよりますが、ほんとに数えきれないくらいたくさんこどもを描く人はいそうです。文学では「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」のルイス・キャロルや、「ハックルベリー・フィンの冒険」や「トム・ソーヤの冒険」のマーク・トゥエインがいますね。自分はこのふたりの作家の作品が大好きです。
こどもを見ると、こどもを感じると、なんというか、うまく言えないんですが、心が豊かになるというかあったかくなるというか。そういえばきっと、高木正勝もこどもが大好きな気がしますね。