ベンチに座って昼食。前は水辺で、気持ちのよい風が吹いてくる。木陰だし、だいぶ涼しい。となりに座ったおじいさんとおばあさん(夫婦ではなく、知り合いのよう)が話をしている。みんないつか死ぬ、であるとか、敗戦、だとかいう言葉が聞きとれる。しかし暗いものはなく、ただ事実を述べるように、たんたんと。いやむしろ明るい調子で。三度三度の食事がおいしい、歳をとると年齢が自慢になる、お風呂に入るのが極楽、などなど、おばあさんが積極的に話している。おばあさんの夫は、もうだいぶ前に亡くなったようだ。十三回忌という単語を聞いた。となりに座ったおじいさんは、しばらくして席を立ってどこかへ行った。若い男女が手をつないで、前を通りかかる。おばあさんは、なにも言わずに立ち上がった。ゆっくりと歩き出した。