トムズボックス(吉祥寺にある、絵本専門の小さな本屋さん)に土井さん(絵本編集をされている方)がいらっしゃったので、「ほどけ犬」を持っていって、見てもらった。絵はいいんだけれど、物語に変化がなさすぎる、と言われた。子供とか出したら、とか。他にもいろいろ。マチエールを愛しすぎている、とか。もっと奇想天外にした方がいい、とか。そもそも「ほどける」ということがいまの子供たちに分かるのか、とか。とにかくあのままではいけないという感じ。このままじゃ寂しいという。なにかもっと変化がほしい、と。なんというか、しかし、あれは自分の一番自然な姿だから、あれは変えられないし、変えるということは無理をするということになると思う。無理はいけない。それに、自分は、あれはあれでいいと思っているから…。たとえ寂しくても。しかし自信がなくなる。向いてないのかなって。つまり、自分のいいと思ったこととプロのいいと思ったことが違うということだから、それはきっと向いていないと言うんだろう。分からないけれど。
自由意志で、絵本が描きたい!と思ったことはあの一度きりだし、まるで絵本が生活ではないし、絵本を描かなければ耐えられない、と思ったことなど一度もないのだから、自分がほんとうの絵本作家ではない、というのは間違いないと思う。けれども、絵本というのがまだまだ大きな可能性を持っている、というのは確信していて、自分だってもしかしたらその可能性をひろげることができるのではないか、とひそかに考えているところがある。いまの絵本は、あるいは次々と新しく出てくる絵本は、ほとんど、その可能性について意識した志の高い絵本がないように思えて、苛立ちを感じることが、ないではない。