今日も生活のために、寒い中、外をうろうろしていた。そうしたら、あるとき、ある家の外壁に、「無名画家達の美術館」と書かれた大きな表札があるを発見した。なんだろう、と非常に興味をそそられ、その家の庭を覗くと、なにやら「無名画家達の美術館」への行き方が記された看板が堂々と立っている。しかしどうにも、その看板では、その美術館の場所がどこにあるのかよく分からなかった。ではまずは、この仕事をきりの良いところまでやってしまってから、また後でじっくり調べようと思い、となりのマンションへ入り、またつまらないアルバイトに打ち込みはじめた。すると、マンション(というかアパート)の二階へのぼり、しばらく進んだところにある、ひとつの部屋のドアに、「無名画家達の美術館」と明朝体の大きな字で書かれているのを、しっかりと見つけた。自分は、この集合住宅の小さな一室が、だいそれた名前を持つ美術館かといぶかりながら、しかし見つけようと思わず突然見つけてしまった嬉しさとともに、さっそくドアを開けようとした(アルバイト中であることなど関係ない)。しかし、鍵がかかっているようで、ドアは動かない。せっかく見つけたのだ、これはぜひ無名画家たちの作品を確認しなければおさまらないと思い、自分はまたとなりの家に戻った。きっと、この家の主人がマンションの管理人であり、また「無名画家達の美術館」の館長でもあるのだろう、と予想したのだ。自分は、呼び出し音を鳴らし、主人を呼ぼうとした。看板には、美術館の休館日が土・日・祝日である旨を伝えている。今日は月曜日だ。また時間的にも、いまなら開いていなくてはならないはず。閉まっているのはおかしい。けれどブザーはただむなしく鳴り響くだけで、だれも出てこない。もう一度音を鳴らしても、同じだった。この家には、主人どころかだれもいないのだろうか…。
結局、「無名画家達の美術館」の中に入ることはできなかった。いまはただ、あきらめるしかなかった。いったいあの部屋はどうなっていて、その無名画家たちの作品は、どんなものなのだろう。想像ばかりが広がるが、それはどこにもたどり着かない。