自分が住んでいる家の持ち主であるおばあさんは、東京へ来る前は神戸にいたそうだ。自分も神戸(明石)出身だから、なんとなく嬉しい気がした。今日家賃を持っていくときに話をしたら、須磨の海の話が出た。東京へ来る前、おばあさんが若いころには、毎年夏になると須磨の海へ泳ぎに行っていたそうだ。それは60年以上前の、戦争が起こる前の話で、いまの海の様子とはずいぶん違っていただろうけど、おばあさんはなつかしく思い出すように、きれいな海だった、と言った。
そのきれいな海だった須磨の海に、偶然自分はおとつい行ってきたのだ。たぶんそれほどきれいでもなくなっただろうけど(須磨の海は、北に山があるのだけれど、そこには景観を崩すマンションがいくつか建っていた…)、それでも海は海で、海というのは(とくに砂浜のある)海というのは、ほとんど無条件にいいものだと思う。
おばあさんは足が悪くてあまり歩けないので、家を出ることもほとんどないそうだけれど、もう一度須磨の海や、神戸へ行きたいと言っていた。