Nさんの絵を見た。目がよろこぶ。頭がよろこぶ。いつまでも、ずっと見ていたい絵。
安部公房は「小説には無限の情報が入っていなければならない」と言っていて、実際そんな小説を書こうとしていたけれど、Nさんの絵もそういうふうに、無限の情報に向かっているように思えた。つまり、いつまでもずっと見ていたいと思うのは、そこに無限を感じるから。頭では簡単に処理できず、分かったと思ってもすぐにすり抜けていくもの。
また、色と意味と形が高いところで結合し、安定することなく壊れようとしながらも、壊れること自体を目的とする甘えにおぼれることなく、絶妙の緊張感で立っている。ほんとうに、なんとも中毒性のある豊かな絵で、自分の絵がいかに貧しいかを思い知らされた(貧しいことが、良くないこととイコールではないけれど…)。