山崎ナオコーラの「論理と感性は相反しない」を読んだ。
山崎ナオコーラの小説ははじめて読んだのだけれど、読んで良かった。この作品は、相当におもしろいと思う。名前がナオコーラだから、また、はじめの小説のタイトルが「人のセックスを笑うな」だから、という理由で読まないのはもったいない(食わず嫌いだった)。自分は、この作品ひとつでファンになってしまった。
まず、軽さが良い。イタロ・カルヴィーノの、現代小説の条件のなかのひとつに「軽さ」があるけれど、確実に持っていると思う。読んでいて、思わず笑ってしまうことが、何回もあった。でも、それは押し付けがましい笑いではなく、もしかしたら作者自身さえ意図していないような笑い…ふいににじみ出てしまったような笑いかもしれない。あんまり好きな言葉じゃないけれど、分かりやすくいうと、天然ぽいというか…。それから文章に、どうでもいいという感じ、いい加減な感じが入っている気がする。これは一見、悪いように聞こえるかもしれないけれど、違う。絵にたとえるなら、きっちりと対象を陰影つけて描写するのではなく、荒く、自由な線を引いていく感じ。そして、少々へんなものが入りこんでも、消さずに残す感じ。そういういろいろな自由さが、わざとらしくなくて自然なのは、才能だと思う。
とにかく自分は、この作者のものはほかのも全部読んでみたい、と思った。そういうふうに思うのは、けっこうめずらしいことだ。



(追記。この日記を書いた後に、アマゾンのレビューを読んで、愕然とした。この小説にたいする評価はかなり低かった。だけど、自分には的はずれに思えるものばかりだった。…たしかに、間違って読んでしまうような危険性もある小説だと思うけど、それが分からないというのは残念だ)