夜、やけに早くに寝てしまったせいか、途中で起きてしまった。それで、また寝ようとしてもなかなか寝れないので、仕方なしに、本を読もうと思って、長嶋有の「泣かない女はいない」を読んだ。
この本はふたつ話が入っているのだけれど、表題作の「泣かない女はいない」をいま読み終わって、思わずうなってしまった。まずなにより、お手本のように上手い小説で、ふつうの人ならほとんど悪く言えないと思う。ほんとに上手くて、決まりすぎている…(決まりすぎているのが、逆に欠点だと思えるほどだ)。
読んでいて、ときどき、むかし働いていたアイスクリーム工場を思い出して、なつかしくなった。べつにまたそこで働きたいとか思わないけど、なんだか、この小説を読んでいると、むかしをなつかしいとか思う気持ちが、やけにわき起こってくる(それは、前に読んだ「夕子ちゃんの近道」も同じかもしれない)。小説は、言葉を使って、まったく新しい世界をつくりだすことができて、そちらのほうが偉大だと思うけれど、そうでないことも小説にはいろいろできる。その「そうでない」ことだって、十分に意味のあることなんだろう(べつに、この小説が「むかしを思い出させる」がゆえに、良い小説だと言っているのではないです。ただ、やっぱり、むかしを思い出しやすい小説と、そうでない小説というのは確実にあると思う。たとえば、この前に読んだ川上未映子なんかは、確実に後者になると思う)。