6、7年くらい前によく見ていたウェブサイトがあって、自分は、その人の書く文章やものの見方が好きだった。ゲームライターのような仕事をしているらしく、話題はゲームについてが多かったが、ときどきその人の生活についても書くことがあった。ゲームについて書くときも、生活について書くときも、つねにどこか暗い影のようなものがあり、あるいはどこか投げやりで、人生についてのあきらめのようなものが漂っていた。さびれた街を夜ひとりで散歩し、そのときに撮ったざらざらの暗い写真を、日記に載せていたりした。その人は、なにかから逃げるように頻繁にサイトを変え、名前もアドレスも変えてあらたにやり直すことがあり、その度にブックマークを貼りなおすことになった。しかしあるとき、ウェブサイトをやめると言って、それっきり音沙汰がなくなってしまった。最後には、なんだか絶望したような調子で言葉を書いていたような気がする。
それ以来、自分はその人がどうしているのか知らなかった。知るすべがなかったし、自分が東京へ来たはじめの2年間は、インターネットもつながっていなかった。それで今日、何年ぶりかに、ふとしたことでその人のことを思い出し、どうしているだろう、もしかしたらまたウェブサイトをつくっているかもしれない、と少しだけ期待しながら検索をしてみた。すると、思いがけない情報が見つかった。その人は、去年の9月に亡くなっていた…。交通事故で。


自分はその人に会ったことはない。一方的にサイトへ行って、文章を読んでいただけだ。それも、期間はせいぜい1、2年くらいだと思う。しかし…どうしてこんなに悲しいのだろうか。どうして、こんなに喪失感があるのだろう。