不安の感情が波のようにおそってくる。いやそんなに強くはないが、ずっとある。すごく分かりやすく言葉にできる不安や、言葉にしにくい不安。不安のようなもの。こうしたいという希望があるのに、ぜんぜんできていないこと。したいと思っているのに、体が動かないことにいらいらする。なぜできないのか。簡単なことに逃げて、ごまかして、難しいことは後回しにするくせがついている。そしていつのまにか消えてしまっている。
違う情報や感情が頭のなかを通りすぎていき、前にあったものが流されてしまう。考えたことがどこかへ行ってしまう。どこかに行ったことにも気づかなかったりする。忘れたものはなんだったのか…それさえ思い出せない。忘れたという感触だけがうすく残っている。また新しい情報がやってきて、どこかへ行ってしまう。そうして時間が流れていく。気づいたらもう遅い、ということをすでに予感している。予感しながらなにもできないでいる。
なにもかもが日かげに入ったまま、次のなにかを待っている。なにを待っているのかは分からない。ただ動くことができずに、そこにいるのだ。ふと足下を見ると、どこかで見たような、半透明の石ころがうらめしそうにこっちを見ている。たぶん、むかしの自分だろう。