その夜、山にある洞窟にひとり入った。木を集めて火を起こし、手をかざして暖を取る。外の風は強く、音は始終鳴っている。どうすることもできずただぼんやりと考えている。歩けばどこかに辿りつくのだろうか。それは自分の望む場所だろうか。火はだんだんと弱くなり、時間がむやみに過ぎていく。もう最初のころとは違う。もしいまから引き返したとしたら二倍の労力が必要となるだろう。だとしたらこのまま進むべきなのだろうか。火は消えた。真っ暗になった。眠りが襲う。このままなにもかもがゆっくりとなくなる予感がする。しかしそのことにさして抵抗もしないだろう。外では星が輝いている。