今日は、保坂和志の「プレーンソング」と「草の上の朝食」を読んだ。「プレーンソング」は保坂和志のデビュー作で、「草の上の朝食」はその続編のような作品。読もうと思いながら、ずっと後回しになっていたもの。
それで、「プレーンソング」と「草の上の朝食」だけれど、おもしろかった。保坂和志の小説の代表作とされているのは、たぶん「季節の記憶」か「カンバセイション・ピース」じゃないかと思うけれど(はっきりとは分からないけれど)、それよりも良かった。もしかしたら自分は、「プレーンソング」がいちばん好きかもしれない。
もうすでに保坂和志の文体みたいなものは完成されていて、いまとほとんど変わらないように思ったし、それ以上にもっといまよりもみずみずしいというか、なんというか、かけがえのない小説のように感じた。もしかしたら、デビュー作というのは、どの作家でもそうなのかもしれない。いま頭に浮かんだのは、高橋源一郎の「さようなら、ギャングたち」とか、もちろん村上春樹の「風の歌を聴け」とか…ほかにもたくさんあると思うし、それ以上は挙げないけれど、とにかく小説のデビュー作というのは特別な輝きがあって、うまいとかうまくないよりも、もっとかけがえのないなにかがあるような気がする。その後、だんだんうまくなっていったとしても、デビュー作のような輝きを放つことはできないのだろう…。なんというか、いま小説の内容というか、雰囲気みたいなものを思い出すと、(ぜんぜん泣くような話じゃないのに)その特別の輝きに、泣けてきてしまう。
それからまた、小説の内容にはぜんぜん関係ない話だけれど、今日は朝から夕方6時くらいまで、ほとんどずっと本を読んでいたことになって、こんなに長い時間、休みなく本を読むのもひさしぶりだった。それで、自分はだいたい寝転がって本を読むのだけれど、カーテンを少し開けて、そこから入ってくる光を明かりにして、読書をした。日中はそれでいいのだけれど、だんだんと暗くなってくると文字が見えづらくなってきて、それでも読み終わるまでは電気はつけないと決めてしまったので、我慢して読み進め、もう日も落ちて限界に思えたときに、「草の上の朝食」の、最後のページに到達した。こういうことをしたのは、学生のとき以来かもしれなくて、大学生の一人暮らしをしていたとき、こういうやり方でよく本を読んでいたのを思い出して(というよりも、そのころに戻ったような気分になって)、なんともいえない懐かしさをおぼえた。