この前行った、ヒント日展の会場になっていたギャラリーショップに、「民藝」という小さい雑誌が何冊か置いてあったので、手にとって見てみたのだけれど、そのうちの一冊に載っていた絵に、強い印象を受けた。むかしの朝鮮の絵らしいのだけれど、よくは分からない。恥ずかしながら、自分は民藝についてなにも知らなかったので、あとで調べてみようと思った。
それで、民藝というと、日本民藝館というのが駒場にあるのはなんとなく知っていて、でも行ってみたことがなかったので、行ってみようと思い、今日行ってきた。いま、ちょうど企画展で「日本の民画−大津絵と泥絵−」というのをやっていて、見ることができた。その雑誌(機関誌?)「民藝」に載っていた絵はなかったけれど、それでもじゅうぶんおもしろく、民画というのを知ることができた。民画というのは柳宗悦が使いはじめた言葉で、江戸時代に民間で描かれ、売られた絵のことのようだ。量産目的で描かれたために、かなり略筆され、しかしそのことによって自由で大らかな絵になっている。とくに大津絵のほうが、より自由な印象を受け、おもしろかった。それから、企画展のほうではなく常設の展示だと思うけれど、朝鮮の文字絵というのも展示されていて、自分にはこれがいちばんおもしろく、新鮮だった。売店もあり、そこに「朝鮮・韓国の絵画(別冊太陽)」というのが置いてあって、ぜひ買いたいと思ったのだけれど、手持ちのお金がなかったので、またそのうち買おうと思った。ここに載っているいろいろな絵は、ぜんぶおもしろそうだったし、はじめに書いた「民藝」の絵も、載っていそうだった。


展示を見終わって建物を出ると、まだ明るかったので、下北沢まで歩くことにした(二駅ぶんだけれど、そんなに遠くはない)。とちゅう、やや広めの駐車場があって、そこに、古そうな家具がたくさん置いてあり、それらに囲まれたかたちで若い男の人が、毛布にくるまって椅子に座っていた。目はどこかうつろで、一点を見つめていて、自分は、なんだろうこの奇妙な風景は、と思ってカメラを手にしたのだけれど、どうしても、それを男の人に向ける勇気が出なかった…。しかしそれにしても、いったいあの人は、あそこでなにをしていたのだろうか。